第10話

「おはよう店長。仕事道具貰ってるし挨拶とか無しでそのまま始めちゃっても良い?」

「構わないぜ。但し全件回って金を詰めたら、一旦その場で連絡寄越しな」

「了解。それじゃ今日からよろしくね」

 そう言ってアマネは通話を切ると、出前箱を持って家を出た。

 階段を降りオートロックの門を抜けると、真っ先にコンビニへ寄る。

 すっかりモーニングルーティンに組み込まれた朝食の調達を済ませると、今日はそのまま仕事へ取り掛かるべく、ターゲットの元へと歩を進めた。

 アマネは事前に訪問先のリストと訪問順を分単位のスケジュールで押掛に指示されていた。

 そのスケジュール通りに業務を遂行するには家に戻って朝食を摂ってる時間が無い。という訳ではなく、端からアマネは押掛の指示などガン無視して、自身の行きたい訪問先へと向かっていた。

 歩き続けること十五分。アマネが向かった場所は、本来ショバ代集めをする為に歩き回る筈だった、東殿川の商店街から少し離れたところにある金の匂いなど全くしない、路上テントが立ち並ぶ小さな公園だった。

 アマネは敷地内へ入ると、水飲み場で喉を潤していた公園の住民に話し掛け、コンビニ袋の中身と引き換えに目的の男の所在を聞き込んだ。

 想定よりもスムーズに情報を引き出せたのは、恐らく”食料モノ“ではなく”格好ナリ“のお陰だろう。

 出前箱を担いでいる今のアマネは、東殿川の住民から見れば区内を牛耳る反社会組織の一翼である。下手に逆らったら命は無いと思われても仕方ない。

 そんな事を心の中で述懐しながらアマネは男に言われた通りのテントへ一直線に向かうと、ノックもせずにテントのファスナーを開けた。

「こんにちは、真鍋道久さん……ですよね? 私が京州飯店の五ツ噛アマネです」

 

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"空の出前箱"編STORY
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