五ツ噛アマネは、点呼の声もしないワンルームアパートの一室で一人静かな朝を迎えた。
刑務所時代の規則正しい生活リズムの名残からか、午前7時の時点で既に身支度を整えており、近くのコンビニで買ってきた朝食の惣菜パンを口に運びながら、一緒に購入した新聞に目を通す。
アマネの関心は朝刊の地域面にあった。
紙面には、窓から激しい炎を噴き上げて周囲の建物諸共災禍に飲み込んでいく、痛ましい様子を収めた写真が載っている。
新聞には「住民の火の不始末により起こった”事故”」と記載されているが、火種を投じたのは他でも無いアマネである。
押掛は覚悟を示した五ツ噛アマネを約束通りの待遇で京州飯店に迎え入れ、昨日起こった全ての事件を約束通り揉み消したのだ。
手錠を掛けられていた方がよっぽど軽かったと思えるくらいに重い十字架を背負った五ツ噛アマネに、最早逃れる道は無い。
アマネは読み終えた新聞を畳み、食べ終えた惣菜パンの包装袋をポケットにねじ込むと、ジャンパーを羽織って再び部屋を後にした。

