「成瀬は天下を取りにいく」という本を読んだ。
読みたくなったキッカケは、タイトルと表紙イラストの一目惚れ。
「これ絶対良書だ。」って俺の中の第六感が反応した。
普段は欲しい本を見つけたらまず図書館で配架状況を確認して、入っていればそのまま借りて節約するのだが、こちらの本はベストセラーということもあって予約待ちが16件。
最長で8ヶ月待ちになってしまう。
いつもならこの時点でスルーすることもままあるのだが、この本は何となく無視できなくて結局その日帰宅した後も気になってしまったので、翌日購入した。
西浦の気持ちがわかる。わかりみが深い。
さておき。
本書についてザックリ紹介すると、200歳まで生きることを目標にしている中学生「成瀬あかり」が、幼馴染の「島崎みゆき」を巻き込みながら西武に夏を捧げたり、お笑いの頂点を目指したりする小説だ。
物語は滋賀県を舞台としており、実在する地名や駅名・店名・名所も出てくるので滋賀県出身の方や住んだことのある方はより楽しく読み進められるだろう。
かくいう私は滋賀県に住んだことは無いのだが、大阪に7年住んでいたおかげで、とある店の名前や地名が出てきた時に共感できて楽しく読めた。
多分、関西に住んでいる(いた)人なら同じように共感できると思う。
ちなみに成瀬が西武に夏を捧げたり、お笑いの頂点を目指していた時期の私は何をしていたのか知りたくなったので、
当時の手帳を開いてみたら、新大阪でサラリーマンをしつつ、2年同棲していたパートナーと別れて家賃3万の1Kに引っ越し
「限界まで家賃と生活レベルを下げると人はどうなってしまうのか?」という実験を始めていた。
そして西武大津店の閉店日に「【メリットしかない】お酒を減らす方法4選 」という減酒に成功した記事を上げていた。
あと、成瀬が大阪でM-1の予選で漫才をしていた日の私は、旧居の光回線解約に伴う撤去工事の立ち会いをする為に十三にいた。
多分この日に成瀬が大阪駅にいた瞬間が一番近くにいたと思うし、梅田に用事があったような気もしなくもないので、もしかしたらすれ違っていたのかもしれない。
なんだか誤解を生みそうな発言だが、何を言いたいのかというと「この頃自分も近くにいたけど何してたっけ」ってリアリティを感じながら読めたのが楽しかったということを伝えたい。
2020年頃に滋賀・関西近辺に住んでいた人はぜひやってみてほしい。
本書の良いところは、短編集だからこそ生み出せた読みやすさと面白さにある。
本書は、30~40ページ程の短編を6作収録した短編集のような構成となっており、1作あたり20~30分で読める。
普段から本を読んでいる人なら半日でサクッと読めると思うが、そこを敢えて6日かけて1日1本じっくり楽しみながら読むのも良いと思う。
かくいう私は、6日かけてじっくり楽しみながら読むつもりが、続きが気になってしまって予定が狂い、結局3日で読み切ってしまった。
嬉しい誤算だ()
次に短編集だからこそ生み出された面白さについて。
正直、短編であることを前情報で知った時は「1作のストーリーが短いと読み応えに欠けるかな?」と思ってしまったのだが、それは大きな間違いだった。
それぞれが独立した話になってはいるのだが、短編同士の時系列やストーリーは繋がっていて、読み終わった後の満足感も感じられた。
読み始めは「全編を通して成瀬の奇想天外な挑戦を面白おかしく見届けていくのかな」っと思っていたのだが、3作目の「階段は走らない」から流れが変わる。
3作目の読み初めは急に成瀬を見失い不安になってしまうかもしれないが、どうか頑張って読み進めて行ってほしい。
中盤くらいで
「あ〜、そうなるのね〜〜〜〜」
ってなって、本書の最後くらいには
「ほぇ〜〜、そう繋がるのか〜〜〜〜」
ってなってるから。
ネタバレしたくないから明言はしないが、要するに一人称視点の作品かと思っていたら群像劇になっていて、かつ、その全ての物語に何かしら成瀬の圧倒的な主人公然とした行動や余波が絡んでいるのが面白い。
そして最後の最後で成瀬の内面を知れる構成となっており、読み終わった頃には成瀬の虜になっているだろう。
ということで、今回は「成瀬は天下を取りにいく」という本を紹介した。
記事執筆時点で既に続編「成瀬は信じた道をいく」が出ており、こちらも読むつもり。
ただしお財布事情の都合、図書館で借りる予定。
最寄りの図書館ではまだ配架されていないが、これだけのベストセラーなら配架されるのも時間の問題だと思うので、気長に待ちつつしばらくは読了の余韻に浸っておく。
成瀬が大津にデパートを建てる前に俺はマレーシアと日本の二拠点生活を達成させたい。